太宰治記念館「斜陽館」

今から83年前の今日(昭和13年11月6日)、甲府の美知子さんのご実家で婚約披露宴が
行われた日です。

その年の9月、美知子さんとお見合いをしたのですが、
緊張して美知子さんの顔を見ることが出来なかったそうです。
ちょうど鴨居に掛けてあった富士山の写真の話題になったので、
その写真を見るために振り向くチャンスがあり、無事顔を見ることが
出来たそうです。
本を読んでもらって自分を知ってもらおうと後日、美知子さんに「晩年」を送った
そうですが、美知子さんもこの本を読んで結婚を決心したようでした。

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十一月六日、私の叔母ふたりを招き、ささやかな婚約披露の宴が私の実家で
催された。
東京からは井伏先生がわざわざ臨席してくださり、文学や画の好きな義兄Yが
洋酒を持参して祝ってくれた。床の間に朱塗りの角樽が一対並んでいた。
結納は太宰から二十円受けて半金返した。太宰はこれが結納の慣例ということを
知らず、十円返してもらえることを知って大変喜んだ。
                       津島美知子著「回想の太宰治」
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年明けの昭和14年1月8日、師匠の井伏鱒二宅で、井伏ご夫妻が媒酌人をつとめ、
ささやかな結婚式が行われました。
津島家側からは、世話人の北さんと中畑さんが出席してくれたそうです。
自分は着たきりで何も持っていないから・・・という太宰さんに合わせ、
美知子さんは普段着の着物で臨んだものの、結婚式当日に立派な紋付羽織袴が
届けられたそうです。
紋付羽織袴姿のコピー

結婚披露宴と言えば、太宰治の生家(現・太宰治記念館「斜陽館」)が
戦後売却されて「斜陽館」という旅館になりましたが、地元民はよくこの大座敷で
結婚披露宴を行ったものだそうです。
小座敷から仏間

懐かしい思い出です・・・


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 朝から眩しいくらいの陽ざしでしたが、
やはり、秋の空です。
雨雲がやってきて、一時、雨模様。
陽ざしを眩しいと感じたのは、久しぶりのことです。
 秋の紅葉シーズンも終盤。
11月半ばあたりからは、初冬の予報です。
晩秋の里の景色は、イチョウの黄色と柿の色。
太宰作品の中のイチョウの風景。


 戸外へ出て、わかい盗賊は、うら悲しき思いをした。この憂愁は何者だ。どこからやって来やがった。それでも、外套の肩を張りぐんぐんと大股つかって銀杏の並木にはさまれたひろい砂利道を歩きながら、空腹のためだ、と答えたのである。二十九番教室の地下に、大食堂がある。われは、そこへと歩をすすめた。
 空腹の大学生たちは、地下室の大食堂からあふれ、入口よりして長蛇の如き列をつくり、地上にはみ出て、列の尾の部分は、銀杏の並木のあたりにまで達していた。ここでは、十五銭でかなりの昼食が得られるのである。一丁ほどの長さであった。
 ――われは盗賊。希代のすね者。かつて芸術家は人を殺さぬ。かつて芸術家はものを盗まぬ。おのれ。ちゃちな小利巧の仲間。
 大学生たちをどんどん押しのけ、ようやく食堂の入口にたどりつく。入口には小さい貼紙があって、それにはこう書きしたためられていた。
 ――きょう、みなさまの食堂も、はばかりながら創業満三箇年の日をむかえました。それを祝福する内意もあり、わずかではございますが、奉仕させていただきたく存じます。
 その奉仕の品品が、入口の傍の硝子棚のなかに飾られている。赤い車海老はパセリの葉の蔭に憩い、ゆで卵を半分に切った断面には、青い寒天の「壽」という文字がハイカラにくずされて画かれていた。試みに、食堂のなかを覗くと、奉仕の品品の饗応にあずかっている大学生たちの黒い密林のなかを白いエプロンかけた給仕の少女たちが、くぐりぬけすりぬけしてひらひら舞い飛んでいるのである。ああ、天井には万国旗。
 大学の地下に匂う青い花、こそばゆい毒消しだ。よき日に来合せたるものかな。ともに祝わむ。ともに祝わむ。
 盗賊は落葉の如くはらはらと退却し、地上に舞いあがり、長蛇のしっぽにからだをいれ、みるみるすがたをかき消した。
                                       太宰 治『逆光』


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今日もまた、太宰の面影を求めて沢山の人がやって来る。
そして、「思い出ノート」に足跡を残して斜陽館を後にする。 

6年ぶりの再訪です。また、ここに来ることが出来て嬉しいです。
ひさしぶりに来ました。もっと好きになりました。
太宰先生と出会えて感謝!津軽に感謝!
初めて来ました。ずっと来たかったのですごくうれしいです。
素晴らしい、残っているのが有難いです。
11歳の時に来てから早36年。再訪できてとても嬉しいです。
 また、ぜひ、来たいと思います。             
お誕生日のお祝いで「斜陽館」に来ました。
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色々な思いを胸に抱きながら、太宰が歩いた煉瓦を踏みしめ
    満足そうな面持ちで、それぞれの居場所へ去って行く。


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