太宰治記念館「斜陽館」

115年前の今日、この建物が竣工した日です。
この家の上棟式と竣工式の古い写真2枚が残っています。
上棟式の写真は当館の文庫蔵に展示してありますが、
明治40年6月21日の竣工式の記念写真は、残念ながら当館では所有しておりません。
あくまでもイメージですがこんな感じです。↓
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6月21日に家が完成し、翌月の7月21日~23日の3日間をかけて長姉たまの結婚式が行われました。
そして2年後に修治少年(のちの太宰治)が生まれ、13歳頃まで住んでいました。
津島家が所有していたのは41年間、その後旅館となって46年間、市(町)所有の記念館になってから24年という月日が流れました。
これほど時が流れても、太宰治のファンは絶え間なく続き、ここに訪れていることに驚きを感じています。


 

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昨日は「六月十九日」。
この金木町に住む人々や太宰治を愛する人達、
そして太宰治記念館「斜陽館」にとっても
1年に1度のとても大切な1日でした。 

今年も、この日に来られた事に感謝。N
もっと生きておじいさんの太宰治の書く話も読みたかった。A 
桜桃忌、誕生日に合わせて沖縄から来ました。太宰治、
 文ストの太宰治、文アルの太宰治、全てがそれぞれ好きです。
 見に来れて良かった。また来ます。誕生日おめでとう。K
                   「思い出ノート」より
 
少年時代、太宰の作品に触れた熟年世代の方々、
最近では、文アルや文ストで太宰に出会い、
ファンになったという若い世代の方々。
今日も太宰の面影を求めて、たくさんの人が津軽にやって来る。
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昨日「太宰治疎開の家」で開かれた朗読会の様子です。
毎年「六月十九日」に行われています。


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 梅雨空の令和4年6月19日、雨。
明治42年6月19日は太宰の誕生日であり、
昭和23年6月19日、雨の朝、行方不明だった太宰が玉川上水で発見された日。
39歳を目前にしての若すぎる死でした。
 先日、収穫にはまだ早いサクランボを見かけました。
梅雨空の下、太宰の『桜桃』が、ふと脳裏をかすめます。

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われ、山にむかいて、目をぐ。
      ―詩篇、第百二十一。

 子供より親が大事、と思いたい。子供のために、
などと古風な道学者みたいな事を殊勝らしく考えてみても、
何、子供よりも、その親のほうが弱いのだ。少くとも、
私の家庭においては、そうである。まさか、
自分が老人になってから、子供に助けられ、
世話になろうなどという図々しいのよい下心は、
まったく持ち合わせてはいないけれども、この親は、
その家庭において、常に子供たちのご機嫌ばかり伺っている。
子供、といっても、私のところの子供たちは、皆まだひどく幼い。
長女は七歳、長男は四歳、次女は一歳である。それでも、
既にそれぞれ、両親を圧倒し掛けている。父と母は、
さながら子供たちの下男下女の趣きを呈しているのである。
 夏、家族全部三畳間に集まり、大にぎやか、
大混乱の夕食をしたため、父はタオルでやたらに顔の汗をき、
「めし食って大汗かくもげびた事、と柳多留にあったけれども、
どうも、こんなに子供たちがうるさくては、
いかにお上品なおさんといえども、汗が流れる」
 と、ひとりぶつぶつ不平を言い出す。
 母は、一歳の次女におっぱいを含ませながら、そうして、
お父さんと長女と長男のお給仕をするやら、
子供たちのこぼしたものを拭くやら、拾うやら、鼻をかんでやるやら、
八面六臂のすさまじい働きをして、
「お父さんは、お鼻に一ばん汗をおかきになるようね。
いつも、せわしくお鼻を拭いていらっしゃる」
 父は苦笑して、
「それじゃ、お前はどこだ。内股かね?」
「お上品なお父さんですこと」
「いや、何もお前、医学的な話じゃないか。上品も下品も無い」
「私はね」
 と母は少しまじめな顔になり、
「この、お乳とお乳のあいだに、……涙の谷、……」
 涙の谷。
 父は黙して、食事をつづけた。
(中略)
 子供より親が大事、と思いたい。子供よりも、その親のほうが弱いのだ。
 桜桃が出た。
 私の家では、子供たちに、ぜいたくなものを食べさせない。
子供たちは、桜桃など、見た事も無いかもしれない。
食べさせたら、よろこぶだろう。父が持って帰ったら、
よろこぶだろう。を糸でつないで、首にかけると、
桜桃は、珊瑚の首飾りのように見えるだろう。
 しかし、父は、大皿に盛られた桜桃を、
極めてまずそうに食べては種をき、食べては種を吐き、
食べては種を吐き、そうして心の中で虚勢みたいに呟く言葉は、
子供よりも親が大事。
                     太宰 治『桜桃』

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北庭のクワの実。
 

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