人間の眼玉は、風景をたくわえる事が出来ると、いつか兄さんが教えて下さった。

たとい兄さんの嘘のつくり話であっても、ちょっといいお話だと思いました。 雪の夜の話

あたり一面真っ白になりました。

太宰治の作品に雪のお話があります。

思いがけず降り積もった雪に大はしゃぎした主人公しゅん子が、お土産にもらったスルメを落としてしまいました。つわりで気分がすぐれない嫂が「スルメでも食べたいわ」っていってたので、食べさせてあげられないから尚更落ち込んでしまいます。

そんな時、いつかお兄さんが教えてくれたあのお話のように綺麗な雪景色を見たら、嫂の気分も晴れるのでは?と考え、雪景色を眺めて帰宅。そして嫂に

「あたしの眼を見てよ。あたしはいま、とっても美しい雪景色をたくさんたくさん見て来たんだから。ね、あたしの眼を見て。きっと、雪のように肌の綺麗な赤ちゃんが生れてよ。」

すると兄が現れて、

「おれの眼を見たほうが百倍も効果があらあ。おれの眼は、二十年間きれいな雪景色を見て来た眼なんだ。おれは、はたちの頃まで山形にいたんだ。しゅん子なんて、物心地のつかないうちに、もう東京へ来て山形の見事な雪景色を知らないから、こんな東京のちゃちな雪景色を見て騒いでいやがる。」

しゅん子が悔しがっていると、お嫂さんが助けてくれました。

「でも、とうさんのお眼は、綺麗な景色を百倍も千倍も見て来たかわりに、きたないものも百倍も千倍

も見て来られたお眼ですものね。」「そうよ、そうよ。プラスよりも、マイナスがずっと多いのよ。」
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