晴天の秋日和。
午後から強い西風です。
秋色をした午後の陽ざしが、
白壁をほんのりとオレンジ色に染めています。
 

「夏の花の好きなひとは、夏に死ぬっていうから、私もことしの夏あたり死ぬのかと思っていたら、直治が帰って来たので、秋まで生きてしまった」
 あんな直治でも、やはりお母さまの生きるたのみの柱になっているのか、と思ったら、つらかった。
「それでも、もう夏がすぎてしまったのですから、お母さまの危険期も峠を越したってわけなのね。お母さま、お庭のはぎが咲いていますわ。それから、女郎花おみなえし、われもこう、桔梗ききょう、かるかや、すすき。お庭がすっかり秋のお庭になりましたわ。十月になったら、きっとお熱も下るでしょう」
 私は、それを祈っていた。早くこの九月の、蒸暑い、わば残暑の季節が過ぎるといい。そうして、菊が咲いて、うららかな小春日和びよりがつづくようになると、きっとお母さまのお熱も下ってお丈夫になり、私もあのひととえるようになって、私の計画も大輪の菊の花のように見事に咲き誇る事が出来るかも知れないのだ。
                                                                                                                                        太宰 治『斜陽』



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