初夏の爽やかな風、
快晴の青い空、
津軽は、穏やかな気候に包まれています。
 今朝の岩木山は、雲一つなく、
とても美しい姿でした。
津軽の人々は、自分の住む地域から眺める岩木山が
一番美しいと思っていて、たまに別の場所から岩木山を
眺めると、やや違和感を覚え、そして、「やっぱり〇〇から見た
岩木山が一番美しい」という結論に達し、
岩木山への想いを新たにするのです。
 岩木山は「津軽富士」とも呼ばれていて、
その姿の美しさが富士山のようだと云われます。
とすると、やはり、金木から見た岩木山が
津軽富士のような、ということになるのではないか
と思い、岩木山談議は果てしなく続きます。
 そんな岩木山を、太宰は、『津軽』の中で、
次のように記しています。

「や! 富士。いいなあ。」と私は叫んだ。富士ではなかつた。
津軽富士と呼ばれてゐる一千六百二十五メートルの岩木山が、
満目の水田の尽きるところに、ふはりと浮んでゐる。
実際、軽く浮んでゐる感じなのである。したたるほど真蒼で、
富士山よりもつと女らしく、十二単衣の裾を、
銀杏の葉をさかさに立てたやうにぱらりとひらいて左右の均斉も正しく、
静かに青空に浮んでゐる。決して高い山ではないが、けれども、
なかなか、透きとほるくらゐに嬋娟たる美女ではある。
「金木も、どうも、わるくないぢやないか。」私は、あわてたやうな口調で言つた。
「わるくないよ。」口をとがらせて言つてゐる。
「いいですな。」お婿さんは落ちついて言つた。
 私はこの旅行で、さまざまの方面からこの津軽富士を眺めたが、
弘前から見るといかにも重くどつしりして、岩木山はやはり弘前のものかも
知れないと思ふ一方、また津軽平野の金木、五所川原、木造あたりから眺めた
岩木山の端正で華奢な姿も忘れられなかつた。
                             太宰 治『津軽』


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電線の後方に岩木山。

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北庭のサツキが満開です。


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