今冬、何度目の寒波でしょうか。
昨日から、吹雪です。
予報では、次第に回復するようですが、
融けかかっていた雪が凍り、
その上に新雪が降り積もった状態ですので、
足元にお気を付けてお越しください。
それにしても、凍れる冬です。


 いったい、私は、誰を待っているのだろう。はっきりした形のものは何もない。
ただ、もやもやしている。けれども、私は待っている。大戦争がはじまってからは、
毎日、毎日、お買い物の帰りには駅に立ち寄り、この冷いベンチに腰をかけて、
待っている。誰か、ひとり、笑って私に声を掛ける。おお、こわい。ああ、困る。
私の待っているのは、あなたでない。それではいったい、私は誰を待っているのだ
ろう。旦那さま。ちがう。恋人。ちがいます。お友達。いやだ。お金。まさか。
亡霊。おお、いやだ。
 もっとなごやかな、ぱっと明るい、素晴らしいもの。なんだか、わからない。
たとえば、春のようなもの。いや、ちがう。青葉。五月。麦畑を流れる清水。
やっぱり、ちがう。ああ、けれども私は待っているのです。胸をおどらせて待って
いるのだ。眼の前を、ぞろぞろ人が通って行く。あれでもない、これでもない。
私は買い物籠をかかえて、こまかく震えながら一心に一心に待っているのだ。
私を忘れないで下さいませ。毎日、毎日、駅へお迎えに行っては、むなしく家へ
帰って来る二十はたちの娘を笑わずに、どうか覚えて置いて下さいませ。その小さい駅
の名は、わざとお教え申しません。お教えせずとも、あなたは、いつか私を見掛ける。
                              太宰 治『待つ』

そろそろ、立春。
一つの季節が終わって、
また春が来る。


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